ある日曜日の夕方近くのこと。できあがったマンダラアートの写真を自然光で撮るため、ベランダの窓をあけようとしてそれに気づきました。
蝶です。白ベースに黒の網模様、赤い斑点が羽の下のほうについている蝶。灰色のコンクリートに映えていましたが弱弱しく体を震わせているようでした。そっと窓を開けて近くで見ようとしても飛び立つ気配はありませんでした。ああ、そうだったのか。片方の羽がやや小さく、触覚の一つが折れ曲がっているようでした。体を震わせていたのは、思うようにならない羽を何とか広げようとしていたのでした。何とかバランスを取ろうとしていたのでした。
どうやってここまで飛んできたのだろうか。。ここは3階なのに。幸い季節外れの暖かい日が続いていました。下手に動かして羽を傷つけることをおそれ、殺風景なベランダでもよければどうぞいてくださいという気持ちでした。お水がいるかと思いそばに流してみても見向きもせず、しまいには横たわって動かなくなってしまったようでした。
翌朝も横たわったままの姿を見て、帰宅後に埋めてあげようと思いながら外出する際、同居する母に、ベランダに蝶がいるから踏まないように気を付けてねと声をかけました。そして帰宅後。蝶は生きていたのでした。時折ピーンと羽をのばして、胸を張っているように見えました。母から米のとぎ汁を与えられたようで、ひょっとして元気になるのでは。。と思うくらいでした。もちろん小さな片羽が大きくなったわけではありません。折れた触覚が治ったわけでもありません。ただとても元気に見えたのです。蝶はその夜も生きていました。
翌日帰宅すると、花に囲まれて動かなくなっていました。いよいよ弱弱しくなった蝶は、母の手により、3階の灰色の世界から、1階の花壇に居場所を与えられていたのでした。
どうにかして自力でたどり着いた場所は灰色のコンクリートのベランダだったけれど、最後まで飛ぶことをあきらめなかったそれは、飛ぶことなく、わたしたちの目に留まり、心を動かし、緑やと紫の色をしたふかふかとした鉢植えに、白い羽をしっかりと立てたまま、眠りにつきました。
※画像はイメージです。リアルではアカボシゴマダラという種類の蝶だったように思います。