自由がもたらした大いなる迷走。
はじめての解放感と焦燥感。
退職後、間を置かずに、
ご縁のあった会社に勤めることもでき、
解放感による心地よさを味わいました。
毎朝のように吐くことも、
なくなりました。
重圧を感じることなく、安心して、
日々を送ることができるようになりました。
休日は、
行きたいときに、
国内・海外を問わず、
行きたい場所を訪れて、
リフレッシュすることができました。
辞めて良かった。
そうおもう瞬間がたくさんありました。
その一方。
自ら選んで退職したとはいえ、
心からやりたいことや、
成し遂げたい明確な目標はありませんでした。
そして、自己紹介をすることに、
苦手意識を持つようになりました。
あなたは何者か?と問われると、
うまく答えられなくなったのです。
全青春時代をかけて獲得した、
確固たる地位を失ったことで、
それらに紐づいていたアイデンティティをも、
失ったのです。
組織の名前や、肩書に、
自分というものを委ねていたことを、
思い知りました。
存在価値がうすれていく。
自分の輪郭が曖昧になる。
そんな焦りを感じました。
わたしは何者なの?
わたしは何者なのだろう。
なぜ生まれてきたのだろう。
わたしは一体、
何がすきで、何がしたくて、
生きているのだろう。
失われたアイデンティティを埋めたい。
とりあえず受かりそうな資格試験の勉強をしました。
受かっても、心は満たされませんでした。
見えない世界に、
手がかりを求めるようになりました。
「定められた未来」があるのなら、
それを知った上で生きていけば、
もう辛い思いをすることがないのではないか。
そう考えたからです。
救われた言葉。何者かでなくてもいい。
占星術やタロットなどの占いを受けたり、
霊感やチャネリング能力のある人にみてもらったり、
前世をみてもらったり、
引き寄せ関連の本も読みました。
わたしが触れたスピリチュアルの根底に流れる思想は、
とても新鮮なものに感じられました。
どんな自分でも、たとえ肩書を失っても、
生きる価値はある。
失敗しても、間違えても、
ぜったいに自分の価値は失われない。
何者かである必要がない。
やりたいことをやればいい。
徹底的な自己肯定が、
社会的地位を失った胸に深くしみました。
頑なだった心と思考がほぐれはじめ、
周囲の環境だけではなく、
行き過ぎた完璧主義が、
自分を苦しめていたことも、
ようやく実感できました。
努力の全否定症候群。
ただ、考え方のバランスを崩した時期もありました。
ふわっと、ポジティブなことだけ、
考えていればいい。
自分がしてきた努力はすべて無駄。
分析なんてしなくてもいい。
何もしなくても、何もできなくても、
ただ存在していい。
目的から逆算して、何かを得ようと、
一生懸命考えなくてもいい。
頭を使わずに、
見えない世界にすべて委ねて、
ラクな気持ちで生きれば、
勝手に、自動的にしあわせがやってくる。
わたしは、きっとしあわせになれる。
カードリーディングで取り戻した手ごたえとよろこび。
そんなとき、自分の心を映し出す鏡として、
何となくカードリーディングを学び始めました。
占い師になろうという動機はありませんでした。
やってみたいと心が動いたことに、
正直にしたがっただけでしたが、
思いがけない効果がありました。
カードの解釈を固定化せず、自らの直観を信頼する。
そして、物事を、さまざまな角度から見つめなおし、
あらゆる可能性を認識し、的確な言葉にする。
自分を客観視する訓練となりました。
カードから読み取ったメッセージを、
生活の中に当てはめ、活かしている感覚があり、
だんだんと、分析思考が戻ってきました。
手応えのようなものが、戻ってきました。
リーディングの修練も進み、
交換リーディングで他人を占う機会が訪れました。
よく覚えています。
本当に、ものすごく喜ばれたのです。
人生に前向きになれると。
すごく、うれしかった。
ハートがじんわりとあたたかくなり、
開くような感覚がありました。
ヒアリングをしていないのに、
不思議と現状とシンクロしている「当たる」要素と、
アドバイスが具体的ですぐ実践できる「活かせる」要素が、
評価されるポイントでした。
努力してきたわたしにしかできないこと。
わたしに元来備わる直感力だけでは、
的確な表現も、具体的なアドバイスもなしえない。
過去のわたしが、めいっぱい努力したから。
学びに対する貪欲さを身につけていたから。
様々な経験を積んだから。
だからこそ、人生に前向きになれるメッセージを渡せたのだと。
あの日々は、決して、決して無駄ではなかったのだと、
悟りました。
社会的地位がなくても、いまのわたしだからこそ、
誰かの人生をよみがえらせるサポートができるんだ。
久しぶりに、よろこびを感じました。
アイデンティティを求め、さまよい、
過去を全否定し、定められた未来という幻想を、
ただただ追いかけた後。
自分と向き合い、いまと向き合い、
行動を積み重ねる中で、苦節10年。
40代にしてたどり着いたよろこびでした。
カードリーディングを本格的にやってみたい。
やっと、本心からやってみたいことに出会えました。